夜明けの湖畔に佇む、湯気の立つバレルサウナ

サウナに入ったあと、水風呂に浸かり、外気浴用のベンチに座った瞬間に訪れる、あの独特の感覚。「頭がすっきりするのに、体は深くリラックスしている」「眠いわけではないのに、意識がふわっと軽くなる」——これが俗に言う「ととのう」です。

サウナ愛好者の間では当たり前に使われる言葉ですが、実はこの「ととのう」、体の中で何が起きているのかを説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。「毎回ととのう人と、なかなかととのわない人がいるのはなぜ」「そもそもととのうって、リラックスなのか興奮なのかどっちなのか」——こうした疑問を持ちながらサウナに入っている人も多いはずです。今回は、日本サウナ学会代表理事で医師の加藤容崇氏の解説や、東京都浴場組合による実験報告などをもとに、「ととのう」の正体を医学的な視点から整理します。

「ととのう」は医学用語ではない

まず押さえておきたいのは、「ととのう」は正式な医学用語ではなく、厳密な定義が確立された概念でもないということです。サウナ愛好者の体感を表す言葉として広まったものであり、その仕組みの解明はまだ研究の途上にあります。東京都浴場組合が公開している実験報告でも、「ととのう」を直接測定したわけではなく、測定された自律神経の変化が「ととのうに該当する可能性がある」という慎重な言い回しがされています。

そのうえで、現時点でもっとも筋の通った説明とされているのが、日本サウナ学会代表理事・加藤容崇氏による自律神経とアドレナリンの働きに着目した解説です。以下で順を追って見ていきます。

サウナ室・水風呂・外気浴で自律神経に何が起きているか

自律神経には、体を活動モードにする「交感神経」と、休息モードにする「副交感神経」があります。車で言えば、交感神経がアクセル、副交感神経がブレーキのような役割です。通常、この2つは片方が強くなればもう片方が弱まるというシーソーのような関係にありますが、加藤氏の解説によると、「ととのう」に至るまでの間、この2つの神経が短時間のうちに目まぐるしく入れ替わっています。

サウナ室に入った直後:副交感神経が優位に

サウナ室に入った瞬間は「温かい」と感じる程度で、体はまだリラックス状態にあります。この段階では副交感神経がやや優位に働いています。

体感が「熱さ」に変わる:交感神経が急上昇しアドレナリンが分泌される

サウナ室での滞在時間が進み、体感が「温かい」から「熱い」に変わると、体は環境の変化にさらされたと判断し、交感神経が急上昇します。このタイミングで分泌されるのが、いわゆる興奮ホルモンであるアドレナリンです。

水風呂:さらに交感神経が優位になる

水風呂に入ると、急激な冷刺激によって交感神経はさらに強く働きます。心拍数が上がり、体は「危機的な状況」に対応しようとします。

外気浴・休憩:副交感神経が一気に優位になるが、アドレナリンは血中に残っている

水風呂から出て外気浴の椅子に座ると、体は「危険な状態を脱した」と判断し、一気に副交感神経が優位に切り替わります。ここが「ととのう」の核心部分です。切り替わった直後の血液の中には、直前まで交感神経が優位だったときに分泌されたアドレナリンがまだ残っています。つまり、自律神経は「リラックスモード」に入っているのに、血中には「興奮物質」が残っているという、矛盾した状態が生まれるのです。加藤氏はこの状態を「稀有な状態」と表現しています。

「ととのう」時間が短いのはなぜか

「ととのう」を体験したことがある人なら、その感覚が長くは続かないことも実感しているはずです。これにはアドレナリンの性質が関係しています。アドレナリンは血中に分泌されたあと、比較的短時間で分解されていくホルモンで、血中に残っている時間には限りがあります。副交感神経が優位になった直後の数分間だけ、アドレナリンと副交感神経が同時に働く状態が保たれ、時間の経過とともにこの組み合わせは崩れていきます。水風呂から出たあとの休憩の最初のおよそ2分間が、この「ととのう」状態にあたるとされているのは、こうした理由からです。

「ととのう」を感じやすい人・感じにくい人がいる理由

同じ手順でサウナに入っても、「毎回しっかりととのう」という人もいれば、「あまりよくわからない」という人もいます。これは自律神経の反応の仕方に個人差があるためです。前述の東京都浴場組合の報告でも、体力のあるアスリート層と一般の利用者とで体感する効果に差が出ることが示唆されていました。加えて、その日の体調、睡眠不足や疲労の度合い、水風呂への慣れなどによっても、交感神経・副交感神経の切り替わり方は変わってきます。「今日はととのわなかった」からといって、入り方が間違っているとは限らず、体調のバロメーターの一つとして捉えるくらいがちょうどよいかもしれません。

東京都浴場組合の実験が示したこと

東京都浴場組合が公開した実験報告では、20代から50代の健康な男女を対象に、心電図が測定できるウェアラブル端末を使って、入浴直後の自律神経の変化を解析しています。その結果、通常の浴槽での温冷交代浴では副交感神経の活動がゆるやかに段階的に高まっていったのに対し、サウナでの温冷交代浴では、入浴直後に副交感神経活動が急激に高まったあと、やや落ち着いていくという異なるパターンが確認されました。報告書は、この「入浴直後の強い副交感神経の高まり」が「ととのう」に該当する可能性があるとしつつ、脳疲労の改善効果までは医学的に確認されなかったとも述べています。また、体力のあるアスリート層と一般の利用者とでは、体感する効果に差が出ることも示唆されています。つまり、「ととのう」という体感の一部を裏づけるデータは出てきているものの、その全体像や健康効果を万人に当てはめて断定できる段階には至っていない、というのが現状です。

「ととのう」を目指すうえで知っておきたい注意点

サウナと水風呂を行き来する温冷交代浴は、短時間で血圧や心拍数を大きく変動させる入浴法でもあります。急激な温度差は血管に負担をかけるため、高血圧や心臓に持病のある人、体調がすぐれないときは、無理に水風呂まで行う必要はありません。持病がある方は、あらかじめかかりつけ医に相談したうえで、自分の体調に合わせて温冷交代浴を行うかどうかを判断することをおすすめします。

仕組みを知ったうえで、自分のペースで「ととのう」を楽しむ

「ととのう」は、まだ研究が進行中のテーマでありながら、サウナ室での温度変化、水風呂での冷刺激、外気浴での自律神経の切り替わりという、一連の体の反応の積み重ねによって生まれる体感であることが見えてきました。仕組みを知っておくと、「なぜ水風呂のあとすぐに座って休むとよいのか」「なぜ無理に長湯をしないほうがよいのか」といった、日々のサウナの入り方の判断材料にもなります。

より具体的な入浴の手順やコツについては、以下の記事もあわせて参考にしてみてください。

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いこい工房では、こうした自分だけの「ととのう」体験を自宅で叶えるバレルサウナを製作・設置しています。電気工事や基礎工事、外構までワンストップで対応し、設置する地域の気候や条例まで事前に調査したうえで施工するのが特徴です。白パインを使った標準仕様のほか、サーモウッドや檜といった素材もご用意していますので、素材選びも含めてじっくりご相談いただけます。自宅サウナに興味を持たれた方は、まずはお問い合わせページからお気軽にご相談ください。